Issue 29 Pandemic Pedagogy Jan. 2021

パンデミック下の教授法 —世界の混乱期における教育継続

  新型コロナ感染症の大流行による世界的な危機が、公衆衛生や経済界の基盤となる機関を未曾有の混乱に追い込んでいる。190の国々では、全面的、あるいは部分的な学校閉鎖が命じられ、この措置が全世界の17億以上の学生たちに影響を与えている(World Bank 2020)。この状況を踏まえ、今回のパンデミックが世界的な教育危機であるとも考えられる事を強調しておく必要がある。国連教育科学文化機関(UNESCO、以下ユネスコ)のオードレ・アズレ(Audrey Azouley)事務局長は、新型コロナが「教育史上、例を見ぬ最大の混乱」をもたらしたと発言した(UNESCO 2020: iii)。これに応じて世界中の教育機関は、教育プログラムの継続性と包摂性を保ちつつ、公衆衛生にも配慮する形で措置を講じてきた。 この特別号は、東アジアや東南アジアの教育者たちが実践し、導入する、パンデミック下の教育実践に伴う、複雑さや可能性についての個人的な論考を集めたものだ。今回、寄稿者には、以下の四つのテーマについて回答を求めた。 突然の遠隔学習への切り替えは、カリキュラムの作成や教育コンテンツの配信、学生たちの福利厚生の確保などに関する各自の教育実践力にどのような影響を与えたか? 遠隔学習の導入によって、学生や教職員の間で、例えばカリキュラム・コンテンツの発信や利用に伴うオンライン・プラットフォームの利用機会や、相対的なデジタル・フルーエンシー(デジタル機器を使いこなす能力)などにおいて、どのような格差が見つかった、あるいは深刻化したか? 各自の教室内で「学究環境に身を置く事が認められない状況(immersion denial)」は、学生と教職員の間に活気あるキャンパス・コミュニティを築く上で、どのような影響を与えたか? 今回のパンデミックは大学の運営方針、例えば、入学や学生サービス、学部のプロモーションや、ファカルティ・ディベロップメント(FD、教職員の教育、運営能力開発)、職員研修や学科改組にまつわる方針に、どのような影響を与えたか? パンデミックさえ無ければ、この世界は資本と人材の活発な循環を特徴としていたはずだ。「パンデミック下の教授法」とは、そのような世界の時空的局面に生じた急激な変化に、教育者たちが適応する際の心得を指す。隔離やソーシャル・ディスタンスの確保といった措置は、我々の地理感覚の構造を変化させ、我々の存在論上の定義を改めて、我々が社会的存在であると現実に即して再定義した(Leader 2020)。また同時に、我々の多くは今回の危機を乗り越える際に時間感覚の変容を経験している。これはつまり、以前、自分たちが慣れ親しんでいた仕事のルーティーンを、いつになったら何らかの形で再開する事ができるのか分からない、そのような不確かな感覚だと言える。この新たな空間的、時間的条件が「ニュー・ノーマル(新常態)」を形成すると言われる中で、我々の苦境を上手く言い当てた言葉がある。それは人類学者、ガッサン・ハージ(Ghassan Hage)の言う、出口の見えない「行き詰まり(“stuckedness”)」だ。彼はこれについて次のように述べた。「それは何が何でも抜け出さなければならない状況というよりも、今、人々によって漠然と、耐えなくてはならない、避ける事のできない病的な状態として認識されているものである」(Hage 2009: 90)。 実務レベルにおいて、パンデミック下の教授法とは、カリキュラムを新たな形式や時間枠に合わせて(再)設計し、導入する際に必要となる、不測の事態に対する問題解決やトラブルシューティングの心得を言う。この心得には、教育者たちが学生や教職員の孤立感や疲労感、不安感を緩和するための措置を講じる義務も含まれる。つまり、パンデミック下の教授法は、単に授業形式の変更のみを指すのではないという事だ。要するに、これは教育に対する姿勢であって、それには従来の業績評価指標の修正が伴う。すなわち、我々がテクノロジーを用いた学習用プラットフォームを教育継続と包摂的な学習(learning inclusion)という二つの目標に向けて活用する能力が、いわゆる「効果的な教授法」の評価基準となるのだ。これらの論考は、アジアにおける教育の現在と未来について、また、アジアの教育機関がどのように世界の知識経済の一端を担い続ける事ができるかについて、改めて考える機会を与えてくれるだろう。 開放型遠隔学習 —心の健康の問題 一連の考察から浮上した重要なテーマの一つが、やむを得ず行われる開放型遠隔学習(Open and  Distance Learning、以下ODL)への切り替えに対する適応の問題だ。このODLは、パンデミックの状況下で緊急遠隔     授業(Emergency Remote Teaching、以下ERT)という形で導入された(Hodges et.al. 2020)。この授業形式の移行には、本来必要な事前準備、例えば有効なオンライン・プラットフォームの分析や、以前に学生から寄せられたフィードバックに対する評価や対応、関連する教授法研究の分析など、するべき事をせずに実施されるという特徴がある。これに加え、危機的な状況の中で、多くの学生や教職員が適切な指導やトラブルシューティングを行う際に、技術サポート要員に頼れない現実がある。そのような事情から、パンデミック中の教育機関によるODLの導入は、これが最適な状態で導入できないリスクが高いにもかかわらず、一般的となった。 技術的な問題はさておき、寄稿者が指摘した問題の中で、最も早急な対応を要するのが、自宅で引きこもる事になった学生たちの抱える心の健康の問題だ。既に様々な研究から、「学究環境に身を置く事が認められない状況」が、学生たちの健康全般に極めて悪い影響を及ぼす可能性のある事が示されている(Cacciopo and Cacciopo 2018; Westrup […]

Issue 29 Pandemic Pedagogy Jan. 2021

The Trial of Philippine Studies

When the news of an outbreak came in January of 2020, I was deep in the archives of the Ateneo. There was no name yet for the illness that months later would force nations to […]

Issue 29 Pandemic Pedagogy Jan. 2021

Teaching in Times of Global Disruption

Every Cloud has a Silver Lining Distance teaching in times of global disruption is a daunting task but can also be a fulfilling experience. I have had first-hand experience teaching remotely for a university in […]