ベトナム政府は、自然保護区の設置や地域住民の利益を配慮することで、環境劣化や地方の貧困問題に取り組んでいる。しかし、こうした政策はしばし紛争を引き起こし、性差による不平等を生み出してきた。ビン・チャウ・フック・ブー保護区のキン族部落と、コン・カー・キン保護区のバナー族部落という、二つの自然保護区に位置する地方自治体の事例から、土地や技術訓練、借入金、天然資源への男女間のアクセスの差異、性差が地域や家族内の意思決定に及ぼす役割などを紹介したい。
1993年土地法は、土地配分において差別が生じないよう規定している。しかし、先のキン族部落では、土地所有者名義の80%が男性であった。バナー族部落では、土地証書自体がなく、自発的な国内移住の増加にともない、違法な土地売買が生じている。両部落では、夫が妻の同意なく家族の土地を売りにだしてしまっていた。
伝統的な自給作物から商品作物栽培への移行や、水稲耕作の導入により、訓練や資本を必要とする新しい栽培技術が必要となった。技術指導プログラムは、男性に対して行われており、女性は情報や制度的なネットワークの欠如、低識字率、男性優位の意識によって脇へと追いやられてきた。バナー族の事例では、言葉の障壁が大きな問題であった。女性が借入金を得ることも難しかった。銀行による小規模借入金プログラムは、縁者がいることや、ある程度の教育を受けていることが前提となっている。また、女性同盟の小規模借入金プログラムは硬直状態にある。
米の生産性は貧弱な土地のため低く、男性はわずかな賃金を求めて出稼ぎに出ることになる。労働機会のない女性は、環境劣化や保護政策の推進により減少してしまった森林資源の採集に労働を集中させることになる。家計維持の分野で周辺化されてしまった貧しい女性は、天然資源の減少に対して有効な対応策をもっていない。こうしたさまざまな要因が、家族や地域での意思決定における女性の立場に制限を与えてしまっている。
政策決定者は、自然保護区の保護には性差に対する認識が不可避であることを自認し、土地や資源に対する男女間の不平等を是正しなければならない。土地法は、共同所有者としての女性を登記するよう改正されねばならない。また、女性に対する借入金や、技術訓練プログラムも必要となる。さらに地方行政は、女性住民の知識や能力を生かした組織改革を行う必要がある。
Tuong Vi Pham
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Kyoto Review of Southeast Asia. Issue 2 (October 2002). Disaster and Rehabilitation