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女性とイスラム教と法律

        

Hjh. Nik Noriani Nik Badlishah, editor
Islamic Family Law and Justice for Muslim Women
『イスラムの家族法およびイスラム女性のための正義』
Malaysia / Sisters in Islam / 2003

Gender, Muslim Laws and Reproductive Rights
『性、イスラム法および生殖に関する権利』
Davao City / Pilipina Legal Resources Center, Inc. / 2001

これらのワークショップ議事録に収録された論文は、イスラム社会における性、生殖に関する権利、および性に関連する暴力を取り扱っているが、家父長制やイスラムの様々な解釈、および現代国家の法律といった、より大きな、相反する規制的な視野をも考慮に入れている。こうした考慮は、『イスラム家族法とイスラム女性のための正義』に提言されるように、インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポールの比較概観において非常に顕著に見られる。これらは「イスラム法の実体的な条項および実施に見られる女性に対する差別の分野」を報告している。ワークショップはまた「最良の方策を強調し、改革のための戦略を提示した。」

家父長制が「伝統」の中に根強く存在し、さらに女性は男性に従属すべきであるというイスラムの教えによりそれが正当化されている国々では、国家構造はしばしば中央集権的であるがしかし弱体で、腐敗しており、役に立たない。インドネシアでは何十年にもわたり、夫婦関係を規定する民事法は無く、国家は未だにイスラム教に対して事実上支配権を有していない。これに対してシンガポールでは、国家は独裁的ではあるが効率的であり、民事裁判所とシャリーア裁判所(Syariah court)と呼ばれる重複する司法を管理し、イスラム教徒に選択権を与えながら、シャリーア裁判所の審義および意思決定のプロセスを規制している。

フィリピンとマレーシアは、これら二つの「両極端」の間に位置している。モロ国民開放前線の反乱は、フィリピン初のイスラム身分法の制定を促した。この法律は様々に解釈され採用されている。しかし、イスラムの女性達が直面している主な課題は、貧困であり、国家が発展と安定を促す力を持たないということである。いくつかのイスラム教の州では、唯一の国家としての存在は軍隊のみである。マレーシアでは、イスラム家族法を国家レベルに委譲した結果、国法と連邦法の間に法規の矛盾が生じた。地方の自治を促進することで、中央政府は宗教における女性の地位を向上させる方向と逆行する状況を作り出したのかもしれない。

皮肉なことは、多くのイスラム国では、国家の近代化が個人および集団の権利を規制し、発展の名の下に特定の基本的自由を制限してきたということである。成功は、それが成し遂げられたところでは、上から支配する指導者(ほとんどの場合は男性)と関連がある。したがって、改革のための戦略は、保守層および新伝統主義者だけでなく、下から発生してくる変化に懐疑的な国家指導者によっても、反対される可能性がある。

『性、イスラム法および生殖に関する権利』は、インドネシアとフィリピンにおける女性の性と生殖に関する権利を扱っている。興味深いことに、これらの論文は最初の書籍で理論的議論を追認している。すなわち、男性が支配する公共機関の反対にもかかわらず、イスラム教の思想の根本には、女性がキラファ(khilafah女性の完全なる力と権威)を世界観に変換するという考えがある。初期のイスラム教は女性の財産権を認め、結婚および離婚における発言権を認め、セックスを享受または拒否する権利を認めていた。しかし、反動的な思想には真正面から対峙しておらず、これらの論文が結論づけることができるものはほとんど無い。今日、ほとんどのイスラム社会の政治においては、保守的勢力が優位を占めているというのが現実である。

パトリシオ N.アビナレス(Patricio N. Abinales)

Kyoto Review of Southeast Asia. Issue 5 (March 2004). Islam in Southeast Asia

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