Site icon Kyoto Review of Southeast Asia

マレーシアの華人企業: 危機を生きのびたのは誰だ?

        

1997年のアジア通貨危機がマレーシアの華人企業にどのような影響を与えたのか? 生き残れたかどうかを決定する重要な要因は規模や業種、負債をかかえているのか、そして多角化の形態であった。建設業、不動産業、製造業部門に主に携わっていた大企業は莫大な負債を抱え、その多角化プログラムは投機的でローンによって賄われており、そのほとんどは危機によって深刻な打撃をうけた。上場株を手に入れたり、金融部門に進出したりした企業も深刻な影響を受けた。このなかには株価を上昇させ、売却する際に莫大な利益を得る目的で狙いをつけた企業の株を大量に買うことで知られていた「荒らしや集団」も含まれている。

危機を乗り越えることが出来たのは慎重で、運営と拡張の際は入念に選択して決めるような企業であった。このような「弾力のある」企業は4つの特徴を持っている。1つめは製品を製造したりサービスを提供したりする「実際の」業務に携わっていること。2つめは通貨危機にあまり左右されない経済分野に関わっていたこと。3つめは大半が手を広げすぎず自分の主要なビジネスに集中していたこと。そして最後に多くの企業が、十分な資産の後ろ盾と貸付にまわせるほどの収入を持ち、利益を蓄えとして保持することで、手足を縛るような負債を避けていたことである。弾力ある企業の中にはマレーシアの外に重要な投資先を持つものもあり、通貨の切り下げから守られていた。しかし香港やヴェトナム、カンボジアに保有していた重要な資産を失ったものもいた。

華人の小・中規模企業(SMEs)はかなり生き残った。彼らが負債問題を回避できたのは皮肉なことに、かなり早い段階で銀行の融資を受けにくくなっていたからである。ある種の小規模企業は通貨危機によって生じた2つの要因によって実際に恩恵を受けた。1つめの要因は、原料や機械、部品を輸入に依存している企業の中には辛酸をなめたものもいたが、マレーシアのリンギットの切り下げにより国際市場の中でマレーシア製品が競争力を得たことである。2つめは、インドネシアの政治経済が不安定であり続けたことにより、多くの多国籍企業が運営先をマレーシアに振り替えたことである。SMEsが重要なのは、製造業がいまだマレーシア経済の最も重要な部門であり、多くのSMEsが地元の華人企業を含む大規模産業と製造面でつながりを持っているからである。

アジア危機は東南アジアの華人企業の強さだけではなく、その失敗も分析すべきであることを認識させた。失敗の多くは経営のミスや製品の質の低さ、技術の低さ、技術革新の欠如、過度の借り入れ、そして様々なビジネスに手を広げすぎたことに起因している。通貨危機は華人が自らの企業を発展させる上で利用するビジネス形態の多様さを明らかにし、東南アジアの華人企業の強さと弱さは本質的に構造的なものであることを示したのである。

 Lee Kam Hing and Lee Poh Ping

Translated by Onimaru Takeshi.
Kyoto Review of Southeast Asia. Issue 4 (October 2003). Regional Economic Integration

Exit mobile version