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現在のフーミーフン新居住区における生活文化の諸相

現在、ベトナムはグローバル化の影響を受けているが、新たな都会の生活様式は政策決定者に新たな課題をもたらした。そこで、ホーチミン市当局は、7区(フーミーフン居住区)の住民の問題と要求に対し、独自のモニタリングと調査を行ってきた。この記事では、外国人の融合を考慮した都市のソーシャル・マネジメントについて、その主な成果と課題の一部を紹介する。

はじめに

1990年代半ばに建設された(首都ホーチミン市7区に属する)フーミーフン(PMH/ Phu My Hung)新居住区は現代的な、ビジネス・商業・金融地区だ。この居住区にはタンフォン(Tan Phong)と、タンフー(Tan Phu)の2地区があり、その750ヘクタールの土地には高所得者層が暮らしている。フーミーフンのタンフォン地区には3,184人(同地区の全住民数の50.4%に相当)、タンフー地区には2,988人(同地区の全住民数の30.3%に相当)の外国人がいる。実際、これらの地区の住民の38%以上が韓国や日本、台湾、中国などから来た外国人で(Ủy ban nhân dân Quận 7, 2022)、ホーチミン市内では、外国人住民が最も多く集中する地区だ。

フーミーフンの急速な発展は、ホーチミン市で起きた急速な近代化と都市化の一環だが、ここにもホーチミン市と同様に、文化的状況をめぐる新たな問題がある。このような急速な変化と、それに伴う問題に対処するため、政策決定者は政策改善の方法を検討し、これに注意を払う必要があった。これまで、政府の努力は都市経営の基準引き上げに注がれてきたが、より重要なのが、人と自然との結び付きの強化だ。(Vũ Thị Hồng Tứ, 2020)。実際、ホーチミン市当局は、フーミーフン居住区を他の都市開発の参考モデルと見ている。

Screenshot of the Phu My Hung project website. https://phumyhung.vn/en/#trang-chu

モニタリングと調査の結果:フーミーフンの住民の生活様式

フーミーフンは高所得層の住民が暮らす地域となったが、予想される通り、生活水準も高く、生活様式も他の地域とは異なる。通常、このような高所得層はプライバシーを重んじ、あまり地域活動には参加したがらないようだ。確かに、ここでの生活様式は前向きで、秩序があり、健康的な生活の必要条件が伴うが、現代社会では、人々は仕事や生活の切り盛りで手一杯にならざるを得ない。結果、以前より、家族や社会との関係が希薄になったように思われる。だが、通常、住民は法律を遵守し、近所の人々などにも敬意を払っている。なお、優れたソーシャル・マネジメントの水準は、管理委員会の設置の有無によって左右される傾向がある。また、様々な国の出身者が住む地域での社会的交流のレベルは、一部、または、全ての住民を巻き込む地域関与のレベルが低い傾向にあるようだ。

結束した文化的な住民社会の構築

フーミーフンの住民は大抵、住民団体の活動に関与しており、住民の50%以上が参加しているが、その大半はベトナム人だった。このような住民参加を促進するのが草の根民主主義法(2022/ the Law on Grassroots Democracy)で、これは外国人の参加も促している。具体的に言うと、全ての住民が犯罪防止や、文化的な生活様式の確立に向けた協力を勧められている。また、政府は(文化活動の家/ Houses for Cultural Activitiesという)共有空間を建設し、地元の自治体や管理委員会が全住民を対象に、テーマ別に集会を企画している。これらの取り組みは、コミュニティ内の重要な架け橋であるばかりか、様々な文化や国籍の橋渡しを行い、相互理解を促進している。また、この地域ではフィットネスや、スポーツ分野での交流活動も定期的に開催されている。実際、フーミーフンの外国人住民の50%以上が、サッカーや、バレーボール、卓球、バドミントン、テニスなどのクラブへ入会している。さらに、地元の自治体と企業は、毎年、地域住民を参加対象とした文化・娯楽・スポーツの大規模なイベントを共同開催している。ちなみに、これらのイベントには、フーミーフンの外国人住民を参加させ、地域文化と国際文化の融合を図るという目的もある。通常、これらの活動は、文化やスポーツ、社会的目標をテーマとしている。例えば、スプリング・フラワー・フェア、チン・コン・ソン(Trinh Cong Son)・ミュージックナイト、アースアワーを過ごそう(Responding to Earth Hour)、環境のためのサイクリング、ローレンス・S.ティン(Lawrence S.Ting)・チャリティー・ウォーク、テリー・フォックス(Terry Fox)がん患者支援ランニング、南部ロータス・フェスティバルなどがある。その他のテーマには、国慶節の国旗掲揚式(9月2日)もあり、これは2009年に初回がスカイ・レジデンスで開催された後、フーミーフンの別の地域でも開催されている。なお、この式典は外国人住民の関心も集めていて、これに参加する事で、ベトナム人は愛国心を、外国人はベトナムに対する敬意を示す。通常、これらの活動は定期的に開催され、地元の自治体や企業、住民は、これらを確実に成功させようと強い関心を寄せている。

Screenshot from the Phu My Hung Facebook page: https://www.facebook.com/phumyhungcitycenter

文化的地域社会の形成に向けた取り組みの総合的成果

 2021年には、タンフォン地区の2,287世帯(同地区内の全世帯の80%)が「文化的な家庭づくり」キャンペーンに参加した。このキャンペーンの意図は、各家庭の家族全員が規則や規範に気を配り、健全な家庭生活を送るというものだ。この時、参加者の100%が文化的家庭と評価された。一方、タンフー地区では、2,170世帯(同地区内の全世帯の100%)がキャンペーンに参加し、95.2%が同様の評価を受けた。さらに、タンフー地方自治体は、家族単位だけでなく、各地区の町単位で同様の文化的な家庭づくりキャンペーンを実施した。この結果、2021年と2022年に、タンフォン地区にある3つの町の全てが文化的家庭の基準を満たしたが、タンフー地区では、基準を満たした町は6分の1であった(Ủy ban nhân dân Quận 7, 2022)。

ホーチミン市当局による評価

 以上の結果、ホーチミン市当局では、より広くは7区、とりわけ、フーミーフンにおいて、外国人家族も含む住民が地域社会の構築に向けた活動に積極的に参加していると認識している。また、ベトナムの文化的な価値観は、フーミーフンに住むベトナム人と外国人の間で維持されている。そして、この価値観は住民に知られるようになっただけでなく、住民はこれらを自分たちの価値観として捉えていた。

観察したところ、都市部の住宅地における、前向きで適切な生活様式の推進は上手く調整されていて、参加者も多い。ここで、その広報活動と資料が様々な言語によって伝えられ、フーミーフン地区の社会秩序と治安が総体的に維持されている点を指摘しておこう。また、運動に参加し、法令を遵守しようとする住民の強い意思も、このような好ましい結果をもたらした。ちなみに、フーミーフンにも半ゲーテッド・コミュニティの構造がある。つまり、全体的には、外部世界との自由な交流が可能だが、区画や、一部の地域にはセキュリティ・ゲートがあって、プライバシーと安全性が保たれている。そして、この構造がフーミーフン地区の町内間交流を促している。また、この地区の各町内では、清潔さと秩序が全体的によく保たれている。これは、地域活動に屋内外のスペースを確保するため、ゾーニングと土地利用が効果的に行われているためで、このようなスペースが無ければ、地域活動の開催は困難だろう。

これらの好ましい成果は別として、いくつかの問題が残っている事も忘れてはならない。まず、住民同士がほぼ初対面で、地域にもなじみの薄い新たな町内で住民同士がまとまるには、常にある程度の時間が必要になる。特に、外国人の大半は借家人で、彼らの賃貸条件は、普通は長期契約でも、永代契約でもない。そのため、外国人とのコミュニケーションや、定期的な交流が長続きしないなどの問題もある。住民の出入りが激しく、仕事で忙しい人たちはアパートの戸が常に閉まっているため、ほとんど会話をすることができない。次に、住民の間で家庭用ペットの飼育が流行し、公共の場で野放しになったペットや、その排泄物のゴミ問題が生じた。住民に、他者を思いやり、習慣を改めるよう促すには、さらなる活動を計画する必要がある。これに関して、外国人住民には、それぞれの出身国の優れた習慣を紹介する役割があるのではないだろうか。それに、外国の優れた習慣を取り入れる事は、生活のその他の多くの場面にも応用できるはずだ。

結論と教訓

こうして、フーミーフン地区は、多くの国から多国籍の人々を受け入れてきた。当然、外国人の間でも、一般住民の間でも、教育水準や、職業、収入には様々なレベルがあるし、彼らの好みも様々だ。このため、ベトナム人を含む全ての民族集団が、フーミーフン地区の現代的な都市生活の公共空間に独自の文化や生活習慣を持ち込んでいる。このため、必要に応じて意見の食い違いを解消し、相違点を克服するには相当な時間がかかると予想される。現状を見れば分かるが、ハードウェアの構築は簡単でも、多文化を対象にした社会的融和計画は、その何倍も困難だ。実際、我々が今日目にする好ましい現象は、20年間の懸命な努力のたまものだ。ハードウェアにせよ、ハートウェアにせよ、都市社会での適切な人間的価値観に沿った地域社会の形成に主導的役割を果たすのは人的要素だ。いわば、ハードウェアの獲得とは、本質的には、生活様式の獲得であり、ある種の地域社会と、それに付随する習慣や風習を選択する事だ。それは、どのような隣人を望むかという選択であり、家族を国際的な環境に組み込むという決断でもある。そして、このような環境で効果的な広報活動を行うには、ガイドラインや、町内の規則、国の法律を伝えるためにも、多言語の活用能力が必要だ。また、この国には、地域活動の計画を任務とする社会組織や、大衆組が存在する。確かに、これらの組織は、他よりも良い結果を出そうと競い合っているが、地方自治体のより大きな政治的・社会的目的の実現に向け、互いに協力もしている。政府のスローガンは、「ベトナム人と外国人を差別しない精神で、全ての住民、家族、その一族、親戚の一人一人の内なる力を最大限に引き出す」というものだ。この精神は、フーミーフン地区が民族間のアカルチュレーションを達成し、ベトナムが海外の文化との融合を果たす力となった。これこそ、フーミーフンの市街地がモデル都市の位置づけに相応しい理由だ。

Nguyễn Minh Nhựt
People’s Council of the Ho Chi Minh City
Email: nhut227@gmail.com

翻訳および編集:David Koh

Banner: HCM, District 7. Crescent in Phu My Hung urban area. Photo: vinh loc

References

Vũ Thị Hồng Tứ. (2020). Đời sống văn hóa của cư dân tại khu đô thị mới, Tạp chí Văn hóa – Nghệ thuật, số 432, tháng 6-2020.
Viện Văn hóa – Bộ Văn hóa. (1984). Xây dựng đời sống văn hóa ở cơ sở. Hà Nội.
Ủy ban nhân dân Quận 7. (2022). Báo cáo số 3951/BC-UBND ngày 12 tháng 10 năm 2022  của Ủy ban nhân dân Quận 7 về tình hình xây dựng đời sống văn hóa tại khu dân cư Quận 7.
Ủy ban nhân dân Quận Bình Thạnh. (2022). Báo cáo số 463/BC-UBND-BCĐ ngày 13 tháng 10 năm 2022  của Ủy ban nhân dân quận Bình Thạnh về tình hình xây dựng đời sống văn hóa tại các khu đô thị mới trên địa bàn quận Bình Thạnh năm 2022.

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