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ベトナムのエコツーリズム:その潜在性と現実

        

ベトナムは、世界第16位の生物多様性をほこる国であり、植物種は13000種、動物種は15000種を数え、これは全世界に分布する生物種の6.3%に及んでいる。生態系の広がりや、市場経済の導入などによって、ベトナムがエコツーリズムに最適な場所であることは間違いない。政府はエコツーリズムを経済発展の先鋒だと位置づけており、実際にここ10年でベトナムに訪れた観光客は7倍に増加している。エコツアーの参加者は、外国観光客の30%、国内観光客の50%にまで達している。エコツーリズムは環境への負荷やインフラへの投資も低くすみ、自然環境や文化に対する教育的役割ももっている。

エコツーリズムの潜在的な対象地域としては海岸生態系、石灰岩質の山々、国立公園、自然保護区や果樹園などがある。そうした地域のほとんどが、景観のみならず、ベトナムの多様な文化をみせてくれる場所である。少数民族は潜在的なエコツーリズム対象地に居住しており、そこは伝統的祝祭、土地利用慣習、食慣行、伝統的生活様式、手工業、史跡の宝庫である。

こうした潜在性にも関わらず、本論では、ベトナムにおけるエコツーリズムの理念性の欠如をいくつかの事例から明らかにする。国家による自然保護区への投資と外国投資家によるホテルやレストランへの投資は順調に進んでいるにも関わらず、環境についての専門的知識をもつツアーガイドやスタッフの育成、つまり人的資源の開発は遅れている。観光はいまだ自由・無規制に行われ環境の悪化を招いている。地域住民やかれらの文化的アイデンティティ、伝統的慣習はエコツーリズムから排除され、経済的な利益も地域には還元されていない。結局、観光マネイジメントや政策は、国家的な戦略の欠如によって政府諸機関の中で分散化されてしまっている。

壊れやすい環境や固有文化の保護、環境アセスメント、運送能力の調査、エコツーリズムの知識をもったスタッフの育成、地域住民の雇用をかんがみながら、地域住民の収入につながる活動と保護活動の双方を視野にいれた関係諸機関の協調がエコツーリズムの発展につながるのである。

Phan Nguyen Hong, Quan Thi Quynh Dao, Le Kim Thoa

Phan Nguyen Hong, Quan Thi Quynh Dao and Le Kim Thoa work at the Mangrove Ecosystem Research Division, Centre for Natural Resources and Environmental Studies, Vietnam National University, Hanoi. The case study presented in this paper is an initial finding from the project funded by the MAB/UNESCO within the Young MAB Scientist Award Programme 2002, and was undertaken with Le Kim Thoa. The author would like to express great gratitude to MAB/UNESCO for this support. 

Read the full unabridged article (in English) HERE

Kyoto Review of Southeast Asia. Issue 2 (October 2002). Disaster and Rehabilitation

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