違法伐採-インドネシアからの歴史と教訓

Yuichi Sato

         

本稿は、インドネシアにおける近年の違法伐採に関する歴史を概観することで、いくつかの教訓を提示する。1999年から2000年にかけ、さまざまな報告の中で、インドネシアにおける違法伐採の重要性と、そういった活動による自然環境や天然資源管理、社会、経済への甚大な影響力が指摘されてきた。EIA-TELAPAKの報告とビデオ、「最後の伐採」とその補足報告は、2002年のインドネシア政府による木材輸出禁止の再履行や、絶滅危惧野生動植物・国際売買協定にある熱帯樹木のリスト化といった重要な諸成果を引き起こしつつ、インドネシアにおける違法伐採に対する国際的なキャンペーンを促した。スコットランドら(1999)は、1999年の違法伐採量を5700万平方メートルだと見積もり、前年度と比べ1600万平方メートル増加しているとした。ウォルトン(2000)は、森林伐採率(270万ヘクタール/年)を見積もり、10年以内にスラウェシ、スマトラ、カリマンタンの低地林が消失すると予測した。社会・経済への影響では、政府が違法伐採量を引き下げようとすると、木材産業の多額の負債、外国援助と同等の機会費用の喪失(約60億ドル)、失業問題(2千万人に直接・間接的な影響を与えた)などが浮上し、その結果として社会不安が生じるだろう。

インドネシア林業省での著者の経験から得られた教訓は以下のようなものである。違法伐採は民主化や地方分権化への急激な変化の間に増加してきており、現在の法整備や、人的資源、中央と地方との交信などについても疑問が残る。インドネシアの問題は、特殊なものではない。そうした教訓は中国、ブラジル、ロシア、アフリカ諸国でも共有している。違法伐採は単純な問題ではない。これは森林の統合と木材産業政策から生じた利益をめぐる問題なのである。最後に、対案としては、利益受給者間の協力や政策立案の中で科学的知見を効果的に用いて、すばやく現地から中央や国際レベルにまで展開することである。

佐藤雄一

Read the full unabridged article by Yuichi Sato (in English) HERE

Kyoto Review of Southeast Asia. Issue 2 (October 2002). Disaster and Rehabilitation

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